続・各駅停車のラブソング~只今絶賛、片思い中。~

第13駅:環状線の四重奏(カルテット)

「ねえ結菜、今日の放課後さ、玲央も誘ってカラオケ行かない?」
そう言って笑う茜の視線は、教室の向こうで男友達の和馬とふざけ合っている玲央に向いている。
茜は気づいていない。玲央が、茜の髪が揺れるたびに愛おしそうに目を細めていることに。
そして玲央も気づいていない。私が、そんな彼の横顔をどんなに切ない気持ちで見つめているか。
私の好きな人は、玲央。
玲央の好きな人は、幼馴染の茜。
茜の好きな人は、ぶっきらぼうだけど優しい和馬。
綺麗な三角形、なんて可愛いものじゃない。これはどこまで行っても交わらない、いびつな四角形のレールだ。
「……あ、悪い結菜。俺、放課後ちょっと用事あるからパス」
そう言って私の肩を小突いた和馬の耳が、ほんのり赤い。
和馬の視線がまっすぐに私を捉える。
和馬は、茜の気持ちを知りながら、私(結菜)のことが好きなのだ。私があんなに玲央を追いかけていると知りながら。
「なんだよ和馬、ノリ悪いなー」と笑う玲央。
「じゃあ、4人でどっか寄って帰ろ?」と提案する茜。
「……うん、そうだね」と話を合わせる私。
私たちの関係は、まるで行き先のない環状線だ。
ぐるぐると同じ場所を回りながら、お互いの背中を追いかけ続けている。
誰かが一歩踏み出せば、この4人の心地いい関係は一瞬で崩壊する。

夕暮れのホーム。
4人で並んで電車を待つ間、それぞれの視線が、それぞれ違う誰かの横顔を追いかけていた。
誰も、自分に向けられている視線には気づかないまま。
< 1 / 9 >

この作品をシェア

pagetop