母国を追われた草いじり令嬢は、敵国で『宮廷植物医』として新生活を満喫しています~元婚約者様と義妹、お元気ですか? 貴重な植物が全て枯れ、さらに私が渡した大事な園芸書を燃やした?じゃあ、もう無理ですね~
最終話:宮廷植物医、皇太子と結ばれる
光が収まったとき、ベルナデッタは見知らぬ場所にいた。
目の前には整備された広大な地面が広がり、青い空には白い雲が長閑に漂う。
(初めて来た場所のはずなのに、どこか懐かしさを感じる……)
「ここは宮殿の屋上だ」
「屋上だったんですか……!? へぇー、こんなに広かったんですね!」
ベルナデッタは感嘆とする。
言われてみれば、遠くに見えるのは帝都の街並みだ。
(懐かしさを感じたのは屋上だったからなのね。空が近くて爽やか……)
土の香りを堪能する彼女に、いくぶんか緊張した様子のラルフが説明する。
「ここは君だけの空間だ。プライベートで植物の世話を楽しめる空間を贈れたらいいと思ってな。さしずめ、屋上庭園といったところか」
「屋上庭園……! 素晴らしい空間をありがとうございます。こんな素敵な場所で植物が育てられるなんて夢みたいです」
「喜んでくれて私も嬉しい。見よう見まねで整備したのだがうまくいっただろうか」
「はい、それはもう! 種を撒いたらすぐ元気に育ちそうです」
深く耕かされていることが触れずともわかり、土作りの苦労が伝わった。
「ところで、話したいこととはなんでしょうか?」
「ああ、それについては……今から伝えようと思う」
ラルフの赤い瞳はいつもよりずっと真摯さを増し、ベルナデッタは心臓の拍動を確かに感じる。
爽やかな風が吹き抜ける中、ラルフは静かに話し出した。
「"冷眼の宰相"……知っての通り、私の呼び名だ。今思えば、私はこの呼び名に甘えていたかもしれない」
告げられる話は初めて聞くことで、一言も聞き逃さまいと耳を澄ませる。
「私は元々人付き合いがそれほど好きではなかったし、他者が怖がって余計な会話をしなくて済むのは楽だった。だが、それではいけないのだとようやくわかった。皇太子として人間として、他者と関わろうとしないで生きるなど愚かな選択だ」
ラルフは語る。
本人の真意を聞き、身が引き締まるようだった。
「ベルナデッタのおかげで私は変わることができた。君は私の心にも種を撒いてくれたんだ。他者と触れ合い相手を慮る大切さという種を。撒いた後も水を撒き、肥料を与え、大事に育ててくれた。そんな君に私は深く感謝したいとともに、この気持ちを伝えたい。……思いを込めて作らせてもらった」
そっと差し出された手の上には、赤い薔薇の髪飾りが乗る。
意味を察したベルナデッタに、ラルフはひたむきな誠実さで伝えた。
「花言葉の通り……私は君を"愛している"」
すぐには理解できなかった。
少し遅れてじわじわとした喜びを感じ、感動で震えてしまう声を懸命に抑えながらお願いする。
「……殿下、その髪飾りをつけていただけますか?」
緑の髪にラルフの瞳と同じ赤い薔薇がよく映えた。
ベルナデッタは屋上庭園を見渡す。
緑でいっぱいになった光景が思い浮かぶと同時、彼女は決めた。
「殿下、最初に植える植物が決まりました。<ニブルフラワー>にします。なぜなら花言葉が……」
ほんの一瞬時が止まった後、太陽にも負けない明るい笑顔が咲き誇った。
「"大好きなあなた"なのですから」
「……好きだ、ベルナデッタ!」
「私もです、殿下!」
どちらからともなく二人は抱き合う。
ベルナデッタの胸には幸福が溢れ、熱い雫が頬を伝った。
(嬉しい……殿下と気持ちが通じあって……すごく嬉しい!)
喜びで身体がふわふわと軽くなる中、ラルフがぽつりと呟いた。
「こんなときになんだが頼みが一つある。殿下ではなく……ラルフと呼んでもらえるか?」
「……喜んでお呼びします、ラルフ様」
今後、屋上庭園には多種多様な植物が育つことだろう。
だが、帝国中、世界中の美しい花々をどれだけ集めても、このときの二人の輝きに勝てるものはいないのだ。
目の前には整備された広大な地面が広がり、青い空には白い雲が長閑に漂う。
(初めて来た場所のはずなのに、どこか懐かしさを感じる……)
「ここは宮殿の屋上だ」
「屋上だったんですか……!? へぇー、こんなに広かったんですね!」
ベルナデッタは感嘆とする。
言われてみれば、遠くに見えるのは帝都の街並みだ。
(懐かしさを感じたのは屋上だったからなのね。空が近くて爽やか……)
土の香りを堪能する彼女に、いくぶんか緊張した様子のラルフが説明する。
「ここは君だけの空間だ。プライベートで植物の世話を楽しめる空間を贈れたらいいと思ってな。さしずめ、屋上庭園といったところか」
「屋上庭園……! 素晴らしい空間をありがとうございます。こんな素敵な場所で植物が育てられるなんて夢みたいです」
「喜んでくれて私も嬉しい。見よう見まねで整備したのだがうまくいっただろうか」
「はい、それはもう! 種を撒いたらすぐ元気に育ちそうです」
深く耕かされていることが触れずともわかり、土作りの苦労が伝わった。
「ところで、話したいこととはなんでしょうか?」
「ああ、それについては……今から伝えようと思う」
ラルフの赤い瞳はいつもよりずっと真摯さを増し、ベルナデッタは心臓の拍動を確かに感じる。
爽やかな風が吹き抜ける中、ラルフは静かに話し出した。
「"冷眼の宰相"……知っての通り、私の呼び名だ。今思えば、私はこの呼び名に甘えていたかもしれない」
告げられる話は初めて聞くことで、一言も聞き逃さまいと耳を澄ませる。
「私は元々人付き合いがそれほど好きではなかったし、他者が怖がって余計な会話をしなくて済むのは楽だった。だが、それではいけないのだとようやくわかった。皇太子として人間として、他者と関わろうとしないで生きるなど愚かな選択だ」
ラルフは語る。
本人の真意を聞き、身が引き締まるようだった。
「ベルナデッタのおかげで私は変わることができた。君は私の心にも種を撒いてくれたんだ。他者と触れ合い相手を慮る大切さという種を。撒いた後も水を撒き、肥料を与え、大事に育ててくれた。そんな君に私は深く感謝したいとともに、この気持ちを伝えたい。……思いを込めて作らせてもらった」
そっと差し出された手の上には、赤い薔薇の髪飾りが乗る。
意味を察したベルナデッタに、ラルフはひたむきな誠実さで伝えた。
「花言葉の通り……私は君を"愛している"」
すぐには理解できなかった。
少し遅れてじわじわとした喜びを感じ、感動で震えてしまう声を懸命に抑えながらお願いする。
「……殿下、その髪飾りをつけていただけますか?」
緑の髪にラルフの瞳と同じ赤い薔薇がよく映えた。
ベルナデッタは屋上庭園を見渡す。
緑でいっぱいになった光景が思い浮かぶと同時、彼女は決めた。
「殿下、最初に植える植物が決まりました。<ニブルフラワー>にします。なぜなら花言葉が……」
ほんの一瞬時が止まった後、太陽にも負けない明るい笑顔が咲き誇った。
「"大好きなあなた"なのですから」
「……好きだ、ベルナデッタ!」
「私もです、殿下!」
どちらからともなく二人は抱き合う。
ベルナデッタの胸には幸福が溢れ、熱い雫が頬を伝った。
(嬉しい……殿下と気持ちが通じあって……すごく嬉しい!)
喜びで身体がふわふわと軽くなる中、ラルフがぽつりと呟いた。
「こんなときになんだが頼みが一つある。殿下ではなく……ラルフと呼んでもらえるか?」
「……喜んでお呼びします、ラルフ様」
今後、屋上庭園には多種多様な植物が育つことだろう。
だが、帝国中、世界中の美しい花々をどれだけ集めても、このときの二人の輝きに勝てるものはいないのだ。

