仕立て屋の秘密の採寸~冷徹な投資銀行家が、試着室でネクタイを解くとき~

 テーラー『サルトリア・千早』
 
 ここは父が経営する高級紳士服の仕立屋で、私、千早(ちはや)美鈴(みれい)はフィッターとして働いている。

 都心の静かな路地裏に佇むこの店には、社会的な成功を収めた男性たちが訪れる。
 
 彼らが求めるのは、完璧な外見なのだ。
 
 そして私には、誰にも言えない秘密がある。それは……。
 
 重度の『完璧なスーツを纏った肉体』の愛好家──いわゆるスーツフェチ。

 仕立てのいい上質な生地が男性の逞しい骨格に美しく沿っているラインや、ネクタイを締めなおす瞬間の喉仏の動きを見ると、それだけで理性が揺らいでしまうのだ。
 
 そして今日のお客様は外資系投資銀行のエリートで、冷徹な完璧主義者と噂されている高瀬(たかせ)利匡(としまさ)様。
 
 彼が部屋に入ってきた瞬間、私はその見事なまでの体躯に息をのんだ。
 
 なんて素敵な骨格をしているんだろう……。

 背筋はピンと伸び、仕立てのいい既製服をスマートに着こなしている。肩幅とウエストのラインが信じられないほど綺麗で、まさに私の理想とする体格だ。




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