独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。

第一話 噛まないで

「美咲っ……」
「ちょっ……翼やめ……」
「少し、少しだけだから……」
「なに言って……痛っ……やめ……やめてって言ってるでしょ!」
 美咲は翼の頭に重めの一発を入れる。

「ってぇー!」
 
「やめてって言ってるのにやめないからでしょ。また腕噛んできて……あんたは赤ん坊か!」
「赤ん坊って言ったら噛んで良いのかよ」
「20歳の男が赤ん坊なわけないでしょ」

 待ち合わせ場所の公園で騒がしく言い合っている翼と美咲。
 2人は恋人ではない、幼馴染だった。

 美咲は翼に噛まれた跡を擦る。

「もー、噛み跡残ってるし……会うたびに1回は噛むの、やめてよ」
「……美咲が可愛いから悪い」
「っ……だ、だからって」

 美咲は翼から目をそらす。
 この言い訳は今回が初めてではなかった。
 なんで噛むのか、翼の言い訳はいつも同じ。
 
 ——『美咲が可愛いから』

 佐藤翼 20歳。

 顔はいい方だと自信があった。
 女にはよくモテるし、自分でも努力をしている。
 幼馴染の美咲とは小学生の時に出会い、今もこうやって週に数回会う関係。

 翼は美咲が大好きだった。

 小学2年生の時、怪力女と男子に呼ばれていた彼女が虫を見てか弱い女の子になった姿を見て以来、翼は美咲に惚れていた。
 彼女を知れば知るほど、好きが大きくなっていく。


「美咲、いつになったら付き合ってくれるんだ?」

 翼は美咲の頬に手をそっと当て、クイッと顔を自分に向けさせる。

「俺はずっと待ってるのに」

 翼の顔がゆっくりと美咲に近付いて——

 
 ガブッ
 
 と、美咲の耳を噛む。


「……っ……だーかーらー!そういうところが嫌なんだってばー!!!」

 

 橋本美咲、20歳。
 独占欲の強い幼馴染がいつも私を噛みたがって困ってます。
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