独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。
 *
 
 佐藤翼 20歳。
 顔はいい方だと自信があった。
 女性に惚れられることも多く、本人も努力していた。
 幼馴染の美咲とは小学生の時に出会い、今もこうやって定期的に会う関係。

 翼は美咲に惚れている。

『調子に乗んな怪力女!』
『はぁ?!なんて言ったコラァ!』
 
 小学生の頃から気の強かった美咲はクラスメイトの女子が男子にいじられているのを見るとボディーガードのように飛んでいき、男子を蹴散らかしていた。
 そのせいで一部の男子に疎まれ、トイレに入っているとバケツを投げられることもあったのに。
 美咲は『隠れてしかできない卑怯な奴ら』と鼻で笑った。
 
 (なんて強い女なんだ)
 
 美咲のことをカッコよく感じたあの日の自分を今も覚えている。
 
 美咲に怖いものなんてないんだと本気で思っていた翼。
 小学6年生の時だった、無敵と思っていた彼女の弱さを見たのは。

『キャァァア!』
 掃除中の教室に美咲の悲鳴が響き渡った。
 教室にいた数人のクラスメイト達と翼は何事かと驚いて美咲を見る。
『ゴ……ゴキ……』
 彼女の指さす先を見ると黒い物体がサワサワと触覚を動かしてどこへ向かおうかと様子を伺っていた。
 それに気付いたクラスメイトの女子たちも悲鳴をあげて廊下へと逃げ出す。
 美咲は怯えて震えたまま、翼の後ろにくっついて隠れていた。
『ううっ……やだぁ……』

 その姿に翼はやられてしまった。
 可愛い、可愛すぎる。
 
 普段は怖いものなんて何もないように見えた美咲が怯えて翼に助けを求めている。
 庇護欲と優越感に翼の心臓は高鳴った。
 
 これが、美咲を好きになった瞬間。

 翼は美咲の頬に手をそっと当て、クイッと顔を自分に向させて「いつになったら付き合ってくれるんだ?」と彼女を見つめた。
 
「俺はずっと待ってるのに」

 恋したあの日から、翼はおかしくなってしまったみたいに美咲のことばかり考えてしまう。
 中学校で男に呼び出されているのに気付き、追いかけて見てしまった出来事から翼の焦燥感は増える一方だ。
 美咲に自分を刻みたい欲から、翼はまた美咲の体を噛む。
 

「……っ……だーかーらー!そういうところが嫌なんだってばー!!!」

 
 それが美咲に嫌がられてもやめられない、その理由。
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