独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。
 *


「ドライヤー、気づかなくてごめん」

 風呂上がり姿の優斗がドライヤーを持って美咲に差し出している。
 優斗が浴室に入ってからタオルドライを丁寧にしていた美咲の髪はもう半分乾き始めていた。
「全然、もう半分乾いてるけど使ってもいい?」
「うん」
「ありがと」

 優斗からドライヤーを受け取り、洗面所で頭を乾かす。
 鏡を見つめると首筋につけられた無数の印が目に入ってしまう。

 赤い小さな痣、髪を乾かしながら指でそっと触れる。
 翼を思い出して胸の奥がズキっと痛んだ。

「美咲、歯ブラシとってもいいかな」

 開けたままにしていた扉から優斗が顔を出す。
 美咲は急いで手を首から離し、髪の毛に手櫛を通した。
 
「うん!どうぞ!」
 
 美咲の横から優斗の手が伸び、洗面台の扉から歯ブラシを取り出す。
 鏡を元に戻し、手を戻す途中、優斗が鏡越しにじっと美咲を見つめた。
 視線に気づいて優斗に顔を向ける美咲。
 

 
 「……翼にどこまでされたの?」


 ドライヤーを止めるのも忘れ、固まった。
 優斗の質問の意味。

 それは身体に刻まれた翼の跡に対しての質問だとすぐに分かった。

「あ……えっ……と……」

 言葉に詰まる。
 鏡にこれだけ映るのに気づかないはずがなかった。
 
 (なんて言ったら……)
 
「……首だけだよ」
 視線をそらし、髪を乾かす。
 ドライヤーの音が胸のざわめきを隠した。
「……そっか」
 優斗は静かに呟く。
 
 うまく誤魔化せたと思った。

 
 いつも些細なことにも気づいてくれる優斗が、首より下の印に気づかないわけないのに。
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