こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「できた!」
 自室で編み上がったマフラーを掲げ、萌木彩羅(もえぎ さら)は満面の笑みを浮かべた。
 初めて縄編み模様に挑戦したがなかなかうまくできた。苦労したかいがある。会社の同期で友達の西垣月菜(にしがき るな)からのリクエストだが、これなら上出来だ。

 月菜の選んだ毛糸は渋い緑。ふだんの彼女の服装はかわいらしいものだから、意外な色だった。秋が速足で冬に向かっているから、本格的に寒くなる前に編めてよかった。
 写真を撮って一言投稿サイトにアップする。

『友達にプレゼントするマフラー、完成!』
 すぐにイイネがついた。

「羊さん、いつもイイネくれる」
 ふふ、と自然に笑みがこぼれた。視線の先には青空羊(あおぞらひつじ)の名前があり、アカウントのアイコンは胴体に青空が描かれた羊のイラストだ。コメントもすぐに届いた。

『網目がとても綺麗です。華糸(けいと)さんからのプレゼント、きっとお相手の方は喜びますね!』
 華糸は彩羅のアカウント名だ。

 青空羊にほめられて、彩羅は嬉しくなる。
 一言投稿サイトで知り合った彼女——たぶん女性だと思う——とは仲良くしている。
 最初、編み物がうまくできずに愚痴をこぼしたら、彼女がアドバイスをくれた。

 その後、上手くできたと報告したら一緒に喜んでくれて、それ以来、仲がいい。
 彼女はフォロワーも多くて人気で、いわば雲上人なのに、よくこんな素人にコメントをくれたなあ、と今でも縁の不思議に感謝している。

「編み物キングにも感謝。わかりやすかった」
 彩羅が手にしたのは、さきほどまで編んでいた編み図の載っている本。初めての編み物からずっとキングにはお世話になっている。
 キングは四十代の男性で、編み物界では人気を博している。いつからか誰かがキングと呼び始めた。
 次は彼氏へのプレゼントを編もう、と彩羅はネットで毛糸を検索し始めた。
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