こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「席に着きなさい」
 万葉の言葉で三人が着席し、自分たちも着席する。
 彩羅と万葉と課長が同じ側に座り、反対側に月菜と慶太が座る。
「では、始める。議題は大きくふたつあるが……その前に」
 万葉がじろりと月菜を見る。
「頼んだものは持ってきているか」
「もちろんです」
 月菜はきゅるんと笑みをこぼし、顔の横にクリームイエローのポーチを掲げる。
「それはどうやって手に入れた?」
「自分で編んだんです」
 しなを作る月菜に、万葉のこめかみがぴきっとひきつる。
「本当に作ったのか?」
 怒りを抑えた低い声。
「大変だったんですよ。花びらの部分とか。専務も編み物が趣味ですよね。青空羊のアカウント、見ました!」
 きゃぴっと語る月菜に、彩羅はむっとした。彼女の口から青空羊の名が出るだけでも許しがたいのに、呼び捨てなんて。自作偽装以上に腹立たしい。
「今のは萌木さんの最後の温情だったのだがな」
 万葉の目が鋭くなり、暖房がかかっているのに慶太と課長は身を震わせる。
 月菜だけがきょとんとしていて、彩羅はひそかにため息をつく。
 この場で悪事を告白し、謝罪をしてくれるなら、と思った。甘かった。
 もう容赦はしない。彩羅は自分に気合を入れる。
「では、まず萌木さんから話を」
 万葉に目で合図され、彩羅は頷いた。
 が、思い出が去来して口を引き結ぶ。
< 188 / 212 >

この作品をシェア

pagetop