こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「西垣さんは自主退職だってね」
「クビじゃないん!? 悪いことやりたい放題じゃん!」
 拓斗の言葉にマリリンは不服の声を上げる。
「そうでもないと思う」
 一見、懲戒がなかったのは手ぬるく見えるが、違うと思う。
 万葉は会社の名誉にかかわるから断固として月菜を訴えると言っていた。
 再就職の後は、給料のほとんどが糸条紡績への賠償で消えるだろう。そうしてずっと自分のしたことを思い知らされるのだ。懲戒解雇であればそのせいで再就職が難しいと言えたかもしれないが、逃げ道が断たれている。決して甘い采配とは思えない。
「大人の世界にはいろいろあるんだよ」
「大人はすぐそうやってごまかす。てか、私も法律上は成人なんよね」
 マリリンは眉をぎゅっと寄せる。
「反省してくれるといいんだけど……」
 漏れ聞こえた話によると、月菜のアカウントは炎上したという。フリマサイトで買った手編み作品を自作発言したことで作った人が怒ってネットで告発し、炎上。買ったものをフリマサイトで高額販売したことで転売屋認定され、さらに炎上。大事にしてきたアカウントを削除して逃げたという。
「無理っぽいんだよね」
 彩羅は遠い目をした。
「彩羅っち、甘いなあ。だけどこの店に店長になるんなら、甘いほうがいいかも」
「店長になったら甘くないよ~」
「えー?」
 抗議の声を上げるマリリンに、彩羅はくすっと笑う。
「君のこと、本当に欲しくなってたんだけど。あきらめるしかないなあ」
 寂しそうな笑顔の拓斗に、彩羅は苦笑する。
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