こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「おはようございます」
 声をかけてバックルームに入り、びくっとした。

 見たことのある後ろ姿がある。
 二度と見たくなかった。だから会社も辞めたのに、まさか。

 その本人が、ゆっくりと振り返る。
 直後、彼女の目が驚きに見開かれた。

 月菜だ。
 研修に来たのは彼女だったのだ。

「どうしてここにいるのよ」
 月菜に責められ、彩羅はうろたえる。

「ここで働いてるから……」
「神経、図太すぎ。糸条でクビきられたのに」

「自主退職だよ」
「言い訳」
 月菜は鼻で笑う。
「もしかしてバイト? みじめ。私は正社員よ」
 彩羅は言い返せずに黙ってうつむく。

「西垣さん。お待たせ。エプロンはこれね。あ、おはよう、萌木さん」
「おはようございます」
 手芸ショップの店長、片岡勝江《かたおか かつえ》に挨拶を返し、ロッカーに荷物を入れる。胸元にAMUAMUと書かれたエプロンをつけると、そそくさとカフェに向かった。

 心臓はどきどきと鳴り、胃がしくしくと痛くておなかに手を当てる。
 どうしてよりによってここに。
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