こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
 拓斗は笑い続け、万葉はあきれたように息をつき、月菜をひたと見据える。
「君は本来、仕事中だろう。抜け出してなにをやっているんだ」
 にべもなく突き放され、月菜の顔がひきつる。

「そもそも、そこに座っていいと誰が許可した?」
 咎める声はどすが効いていて、月菜は一瞬は固まった。が、すぐさま席を立つ。

「ごめんなさい、私……」
 うるうると目を潤ませるが、万葉のこめかみがぴくっと不機嫌にひきつる。
「さっさと仕事に戻れ」
 とどめを刺され、月菜はむっとして(きびす)を返す。
 彼女が戻るのを確認し、彩羅は大きく息をついた。

「お疲れ」
 カウンターに戻った拓斗に声をかけられ、彩羅は顔を上げた。
 そこには拓斗の優しい瞳がある。

「大丈夫だよ」
 なにが、とは言わない。
 だけどそれだけで伝わるものがあって、彩羅の目が潤んだ。
 その頭を、拓斗がぽんぽんと慰めるように撫でる。

「俺は君を信じる。万葉だってそうだ」
 そっと耳元でささやかれ、彩羅は、こくん、と頷いた。

「なにをしている!」
 大声が響き、彩羅はびくっとした。
 カウンターの入り口に万葉が仁王立ちで立っていた。かと思うとずかずかと中に入ってくる。

「彼女に手を出すな! 彩羅さん、気を付けて。こいつは女に手が早い」
 さっと抱き寄せられ、彩羅は硬直した。
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