こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「申し訳ありません」
 彩羅が客席に聞こえないように小声で言うと、マリリンは口をとがらせる。
「悪いのはあいつじゃんね」

「あの男が元カレか?」
「はい……」
 万葉に聞かれ、彩羅は気まずく頷く。

「彩羅っち、男運わるっ」
 マリリンには返す言葉もない。

「万葉に偽装彼氏になってもらったら? そしたらあいつももう来ないんじゃない?」
 いたずらっぽく拓斗が言い、彩羅はぎょっとした。
 ちらりと万葉を見ると、彼は唖然としていて、それから気を取り直したように言う。

「偽装などしない」
 断言するさまは男らしいが、残念な気持ちが浮かんでしまう。
 自分の可能性は微塵もないと宣言された気がして。
 だが、直後。

「正々堂々と彼氏になってあの男を滅ぼす」

 なに言ってるの?
 彩羅は呆然と万葉を見る。
「俺が彼氏では不満か」

 彩羅はぶんぶんと首を振った。
「逆にまばゆすぎます」
「じゃあ嫌ではないんだな」
 嬉しそうな彼に、たくさんの疑問符が浮かぶ。
 これ、どういう状態? 彼氏に? 青空羊さんが?
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