こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
 社員登用制度もあると言ってもらえた。カフェは好きだし、編み物だって結局のところは好きだ。好きなものに囲まれる職場なんて、そうそうあるわけじゃない。
 だけど、それでいいのだろうか?

 自動ドアが開き、お客さんが入ってくる。
「いらっしゃいませ!」
 彩羅は無理やり笑顔を作って声をかけた。



『よかったら一緒に美術館に行ってくれないか』
 万葉の誘いのメールを見たのは自宅に着いてからで、彩羅は驚いてスマホを見た。

『この企画展なんだが、ひとりでは行きづらくて。休みは合わせる』
 言い訳のような追撃メッセージが届く。
 美術館のレース展で、ヨーロッパの古いレース編みを展示しているらしい。

 恋人がどうのとかの発言があったが、あのあとはまったく色気のある言葉を聞かない。
 だからこれはデートのお誘いではなく、友人としての誘いだろう。
 仕事は大丈夫だろうかと心配になるが、結局は承諾した。

『少しでもお力になれるなら、喜んで』
 送ってから、恩着せがましいな、と反省した。彼に会える喜びを隠そうとしたら、こんな返信になってしまった。

「ちょっと出かけるだけだから」
 自分に言い聞かせながら、彩羅はそわそわとクローゼットを確認した。
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