【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
立ち上がって頭を抱えながら、パニックに陥っていたのは入社三年目の桜庭美桜だった。
美桜は今回の全社を横断して行われる大型プロジェクトの一員として、初めて運営事務局のメイン担当を任された一人だった。
「どうしたの、美桜ちゃん?まずは落ち着いて、ね!?」
真紀子が慌てて駆け寄って美桜を椅子に座らせるものの、彼女は涙目になりながら何度も空になったフォルダをクリックする。
「今日お昼から予定しているキックオフミーティングで使うプレゼンデータが、どこにもなくて……っ。バックアップのフォルダも空っぽなんです……っ!」
「嘘!?美桜ちゃんが何日もかけて各部署から集めてたあのデータのこと?」
「はい。それに、さっき営業部の小川さんから連絡があって、参加人数が前に聞いていた人数より十人も増えてて、会議用に手配していた『松の井』のお弁当が全く足らないんですっ」
どうすればいいですか、と泣き崩れる美桜の言葉に、総務部のフロア内の空気が凍りついた。
今日は初お披露目となる重要なキックオフミーティングの日。会社の役員も勢揃いする中で、資料もなく、弁当も足りないとなれば、メイン担当の美桜はもちろん、総務部全体の責任問題に発展する。
「弁当なら今から追加の予約電話を入れたらなんとかなりませんか?」
「部長、それが『松の井』は完全予約制で、当日の追加は無理だと先ほど断られてしまって……っ。もう会議まであと二時間しかありません。部長、本当にごめんなさい……っ」