【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
絶望的な状況に、白神部長や真紀子たちも完全に言葉を失っている。
「(……あと二時間)」
騒然とするフロアの中で、悠里はやけに冷静だった。
脳裏に蘇るのは、過去に裕一から浴びせられた言葉の数々。
『なんで大事なときに悠里はいつもミスするの?僕の足を引っ張りたいとしか思えないんだけど』
『誤字脱字なんてきちんと確認さえすれば防げることだよね?それを怠ったんだよね?』
『邪魔するなら……もう他の人と代わってくれる?』
裕一は人的なミスでさえ絶対に許さなかった。
突然のスケジュール変更、深夜の資料の作り直し、理不尽な接待の手配だけじゃない。裕一の食事の用意からスーツの管理、彼が所持している車の点検やオイル交換まで、すべて悠里に押し付けた。
それに比べると、美桜が犯した失態なんてどうってことはない。
悠里は迷った末に立ち上がって、泣いて狼狽えている美桜の元へ歩み寄った。
「桜庭さん、大丈夫ですか?」
「お、奥畑さん……ごめんなさい、私……」
「各部署から送られてきたという資料の元の素材データはおそらくメールに残っていると思います」
「……!」