【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
切実にそう言った理人に、悠里の心臓が大きく高鳴った。
「(最近、理人くんと一緒にいると、安心感と同じくらい……ドキドキする)」
「そ、そういうことだから!俺のわがまま、それだけだから!」
理人は早口にそう言ってキッチンへ隠れてしまった。
目を丸くしたままの悠里は、少し経ってから大きな笑い声を発した。
「(あぁ、なんだか幸せだな)」
こんなふうに思えたのは、もういつぶりだろうか。
生きることさえ億劫になったあの日から、どうにか自分の足で立たなければと今までずっと奮闘してきた悠里は、まさか自分が再びこうして幸せを実感できる日がくるとは思ってもいなかった。
いつも通りに先に出勤する理人を見送って、自分も身支度を整えて家を出る。
そんな何気ない日常が、こんなにも楽しいと思えるようになったのは、間違いなく理人のおかげだった。
「……悠里?」
そんな悠里をドン底へ突き落とすのは、いつだってこの男だった。
会社のビルの前に立っていた人物に、悠里は全身の血の気が引くのを感じた。
「やっと会えたね、悠里」
「……裕一、さん?」