【1章だけ大賞長編用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
「あ、そういえば悠里ちゃんの歓迎会やらないとだね」
「確かに。うちの部署ってみんなちゃんと歓迎会してもらってるしね」
「いえ、そんな!みなさんにこうして今日ランチに誘っていただけでもう……」
「実はね?奥畑さんの歓迎会を開いてあげなさいねって、すでに私、部長からポケットマネー預かってるんだよね」
「ウチらの部長って本当にいい人だから、こういうときは甘えたほうがいいのよ」
「そうそう。ほら、それにさ──……タイミングが合えば〝王子様〟も参加してくれるかも、だよ?」
「……王子、様?」
全員のお皿が空っぽになったタイミングで、〝王子様〟についての話題を切り出したのは佐藤奈美だった。
奈美のその話題に、手を叩いて『それだ!』と乗り気になった真紀子達を他所に、悠里はキョトンと頭を傾げた。
「あのね、奥畑ちゃん。これから今日一番重要なことを伝えるね?」
「じゅ、重要なこと……ですか?」
「うん。とっても大切なことだから、よーく聞いておいてね」
「でしたらメモを出すので少し待ってください」
「いいのいいの!メモなんて取らなくていい」
「そう、ですか」
入社初日の、一番重要なことってなんだろう。
真剣な表情でそう言う真紀子に、悠里は背筋を伸ばして身構えた。
「うちの会社にはね、王子様がいるの」
「……え?」
「もうね、本当にキラッキラなの。背も高くて爽やかな子でね?」
「えっと、あの」
「そうそう。鼻筋もシュッてしてて、程よく大きな二重の目にね、口角がキュッて上向いてんの」
「最初見たとき、君はアイドルかね!?ってあたし叫んじゃったもんね」
「しかもね?なんと経営企画部に所属されてんのよー!うちの社内で一番の花形出世部署!頭良いんだって、彼!」