【1章だけ大賞長編用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
真紀子達四人がキャッキャと〝社内の王子様〟について熱く語っている様子を見て、悠里の脳内は混乱していた。
それでも構うことなく真紀子達先輩組は王子様のことを止めどなく話し続ける。
その〝王子様〟は大学院を卒業後に入社して以来、早々に人事部、営業本部、経理部などを回ったのち、会社随一のエリート部署と言われている経営企画部に所属が決まったそうだ。
そこから会社全体を巻き込んだ大型プロジェクトの責任者になったり、海外展開も積極的に行ったりと、類稀なる才能を発揮している期待のホープならしい。
顔も良くて仕事もできるうえに、プロジェクトに関わる部署によく顔を出して手土産や差し入れを持ってきてくれる気遣いもできるイケメンだとたちまち有名になり、そしていつの間にか付けられたあだ名が〝王子様〟なのだとか。
「いい、奥畑ちゃん?今からそんな彼の名前を教えるね?今日はもうこの名前さえ覚えて帰ってくれたらいいからね?」
「あんた教育係として最悪だよ、それ」
両手でガッと悠里の肩に手を置いて向かい合いながら、真紀子は彼女を見つめる。
きっと先輩達は、こうして場を和ませて自分の緊張をほぐそうとしてくれているのだろうと、悠里はそう考えてふっと笑みをこぼした。
「彼の名前はね、丹波理人くんっていうの」
「丹波、理人?」
その名前を聞いた瞬間、悠里の心臓が大きく跳ねた。
「あ、そういえば奥畑ちゃんと理人くんって同い年じゃなかった?悠里ちゃんも今、二十九歳だったよね?」
「そう、ですね……」
「彼まだ独身みたいだし、噂によると彼女もいないみたいだからさ!奥畑ちゃん、狙っちゃいなさいよ!」
「え?」
「あたし達はほら、もう旦那も子供もいるし?狙ったらいろいろアウトじゃん?」
「うちら先輩組は、奥畑ちゃんを全力で応援するからね!」