【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
「(こんなに優しくしてもらっていいのかな)」
理人の底なしの優しさに、ときどき感謝の気持ちを通り越して申し訳なくなってしまうときがある。
けれど当の本人はそれを全く苦に思うどころか、率先して喜んでやっている。
「じゃあデスクだけ買おうかな。ベッドは理人くんと同じ寝室に移動したし、確かにちょっとガランとしてるかもね」
「……っ!!」
「理人くん?」
「待って、ちょっと待って……」
「ど、どうしちゃったの?」
悠里の何に赤面してしまったのか、理人はまたいつものように両手で顔を覆って崩れ落ちていく。
「お、同じベッドって……言わないで」
「えぇ!?なんで!?」
いまいちわからないところで顔を赤くする理人に、悠里はお腹を抱えて笑った。
こんなふうに誰かと笑って過ごせる日がくるなんて、少し前までの悠里には想像もつかないことだった。
裕一と暮らしていたときは、とにかく毎日が必死だった。
土日だろうと関係なく目まぐるしく時間が過ぎていく日々。
こうしてのんびりとあたたかい部屋で趣味まで持てるようになるとは思ってもいなかった。
「あ、そうだ。今度の休み、悠里ちゃん何か予定ある?」
「来週?……ううん、特に何もないよ」
「よかった!もしよかったら、一緒に水族館いかない?あのイルカショーが有名な星川水族館ってなんだけど」
「うん、いいね!イルカ大好き!」
悠里の返事を聞くと、理人はパァッと顔を明るくした。
理人はときどき、こうして悠里をデートに誘うようになった。
場所は至って定番で、映画館やショッピング、カフェ巡りや遊園地など、まるで高校時代にできなかった青春を一つずつ取り戻しているかのようだった。