聖女の力を搾取されて使い捨てられた元聖女は、辺境地へ国外追放されて冷酷聖騎士に溺愛されながら運命愛に導かれました
 数日が過ぎ、アンナが隣国の辺境地へ追放される日がやってきた。
 アンナが自室で療養している間に季節は進み、冬から春になっていた。
 春の青空と暖かな日差しが辺りを包み、まだほのかに冷たさを感じる春のそよ風が吹いている。
 (はあ……)
 アンナは自分の心とは真逆に天気を見て溜め息を吐く。
 アンナは白いシンプルなブラウスに黒のロングスカートと黒いローファーを履いている。
 聖女修道院を出る前にアンナは仲間の聖女たちと別れの挨拶をした。
 アンナは聖堂に安置されている大聖女像を寂しそうに見上げる。
 (大聖女アンナ様……)
 アンナは最後に聖女になってからずっと祈っていた、アンナの聖女名の由来でもある大聖女アンナ像へ祈る。
 アンナは祈りを終えて、自分の荷物を詰めたトランクケース一つを持って外へ出た。
 外へ出ると、聖女修道院前でセレスティナとレユスットがアンナを待っていた。
 アンナはセレスティナの前まで歩き、立ち止って荷物を地面に置いて首から下げている聖女のロザリオを外す。
 「大聖女セレスティナ様。わたしはもう聖女ではないので、これをお返しします……」
 アンナは聖女の証である聖女のロザリオを両手でセレスティナへ差し出す。
 アンナは聖女ではなくなったため、持っている資格がないと自分で判断した。
 しかしセレスティナはアンナの手を優しく包み、聖女のロザリオを握らせる。
 「これはアンナが持っていてください。きっとアンナの助けになるでしょう」
 セレスティナはアンナが大聖女アンナを誰よりも深く信仰し、祈りを捧げている事を知っている。
 セレスティナはそんなアンナから聖女のロザリオを取り上げる事はできなかった。
 「セレスティナ様、ありがとうございます」
 アンナは大切そうに胸の前でロザリオを両手で握り、いつものように聖女のロザリオを首から下げる。
 アンナはレユスットが用意した馬車に乗り込むと、馬車の外からレユスットがアンナに声をかける。
 「アンナ、会いにいくからね」
 アンナはレユスットと視線を合わせたが、その言葉に答えなかった。

 馬車はゆっくりと動き出し、アンナは隣国の辺境地へと追放された。
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