聖女の力を搾取されて使い捨てられた元聖女は、辺境地へ国外追放されて冷酷聖騎士に溺愛されながら運命愛に導かれました
 アンナとエドワルドは今日も二人で魔物を討伐するために森を歩いている。
 アンナは修道女の衣装に瑠璃色のローブを身に纏っている。
 エドワルドは白シャツに黒のスラックスとダークブラウンのロングブーツを履いている。
 背中には女神アテナから授かった聖剣を背負い、アンナと同じ色の外套を身につけている。
 アンナは何度も歩いている道のはずなのに、歩くたびに景色が違うように感じている。
 森が景色を変えているのではない。
 アンナの視線は魔物を討伐するために戦う鋭い視線のみだったものから、次第に煌びやかの中に柔らかで甘く切ないものが含まれていった。
 アンナは今日もその視線を作り出す源を密かに見つめる。

 二十一歳のエドワルドは百八十センチほどありそうな高身長で、鍛えられて引き締まった体型をしている。
 髪色は落ち着いたアッシュブラウンで清潔感があり、髪型は前髪を下ろし、飾らないすっきりとした印象を受ける。
 エドワルドは端正な顔立ちをしており、ロイヤルブルーのような青い瞳は意志が強そうな力強さ秘めている。
 身長が百五十五センチのアンナがエドワルドを見上げていると、その視線に気づいたエドワルドはアンナと視線を合わす。
 エドワルドと視線が合い、アンナは照れたのを隠すように普段通りに話し始める。
 「エドワルド様、今日の空の乗馬も楽しかったわね」
 幼い少女から美しく成長した十八歳のアンナはエドワルドと会話を弾ませた、空の乗馬の感想を楽しげに話す。
 アンナとエドワルドは年齢が近いため、打ち解けるのに時間がかからなかった。
 女神アテナから授かった白いペガサスに乗るエドワルドはアンナを乗せて森まで来てやってきて、今はペガサスを森の入り口で待たせている。
 「アンナはペガサスに乗るのが好きだよな。帰りは俺の前に乗るのか? それとも後ろに乗って俺にしがみついて乗る方がいいか?」
 アンナはその時の気分で乗り方を変えている。
 前に乗ればエドワルドに後ろから抱きしめられる形で乗れる。後ろに乗ればエドワルドの広くて逞しい背中の体温を感じながら乗れる。
 「考えとくわ」
 アンナはにこやかに答えると、雲ひとつない空を見上げる。
 アンナは晴れの日が好きだ。
 しかし晴れの日より好きな天気がある。
 アンナは午後から天気が崩れて雨が降る日が好きだ。
 アンナはエドワルドと魔物討伐へ来ていている時は雨が降らないかとよく空を見上げている。
 今もその天気にならないかと遠くの青空を眺めていると、エドワルドと目が合う。
 「また空を見上げて神の事を考えているのか?」
 アンナがエドワルド越しに空を見上げていると、エドワルドが尋ねてくる。
 以前にアンナが同じように空を見上げていた時にエドワルドに同じ質問をされた。
 アンナがとっさに答えた理由をエドワルドが覚えていて声をかけている。
 アンナはエドワルドへ柔らかな笑みで答える。
 「どうかしら」
 アンナはいつも答えをはぐらかしている。
 本当の事など言えるはずがない。
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