聖女の力を搾取されて使い捨てられた元聖女は、辺境地へ国外追放されて冷酷聖騎士に溺愛されながら運命愛に導かれました
 「熱心に祈るんですね」
 マリーは立ち上がり、フィデリックへ向き直ると彼へ唐突に質問をする。
 「フィデリックさん。どうしてアンナ様は白バラを持っていると思いますか?」
 「え? 白バラは大聖女アンナ様の象徴だからではないんですか?」
 フィデリックは一般的に周知されている白バラの意味を答える。
 フィデリックは聖女だったマリーは当たり前に知っているはずだと思い、なぜこの質問をしたのかと疑問に思う。
 「そうよね。そうだったわね」
 マリーは以前の自分と同じ事を思っているフィデリックへその言葉だけを返し、再び大聖女アンナ像を見つめる。
 フィデリックは大聖女アンナ像へ身体を向けて見つめるマリーに声をかける。
 「あの、マリー様。聖騎士王太子殿下のことをよろしくお願いします」
 フィデリックはマリーに頭を下げる。
 マリーはフィデリックの言葉の意味が分からず見つめていると、フィデリックは頭を上げてウィラルドについて話し始める。
 「マリー様はパートナーの聖女だと聖騎士王太子殿下からお聞きました。聖騎士王太子殿下は軽々しくそのような言葉を口にする方ではありません。僕はその言葉が意味している事も承知しているつもりです」
 マリーはウィラルドが自分の家族の他に信頼している部下にマリーが自分のパートナーの聖女だと話したと言っていたが、フィデリックに話していたようだ。
 マリーはジェルブロゼ村でウィラルドの聖剣が白く光ったのを見ているため、ウィラルドは英雄聖騎士であるエドワルドの生まれ変わりだと信じている。
 それを見ていないフィデリックはウィラルドの言葉だけを信じるしかない。
 フィデリックは真剣な顔でマリーへ話しを続ける。
 「聖騎士王太子殿下はご覧の通り、愛想が良くありませんので、誤解される事もあります。
ご本人は気にされていませんが、マリー様が聖騎士王太子殿下と一緒にいてくださると安心します。
マリー様と出会った聖騎士王太子殿下は少し雰囲気が柔らかくなったように感じます。以前はもっと鋭い雰囲気でした。
以前の聖騎士王太子殿下は今日の日を僕に遊んでくればいいなど言わなかったと思います。
部下としてできる事は限られます。マリー様、どうか聖騎士王太子殿下をよろしくお願い致します」
 フィデリックは改めて同じ言葉をマリーへ伝えて頭を下げる。
 マリーはフィデリックの言葉を嬉しく思って答える。
 「わたしはこれからもウィラルド様と共にいます。フィデリックさん、いつもウィラルド様を支えてくださり、ありがとうございます」
 フィデリックは頭を上げると、マリーへ笑みを返す。
 マリーはウィラルドとこれから先も一緒にいたいと思っている。
 しかしその気持ちがどのような形で一緒にいたいかまではイメージできていない。

 マリーはヘレナとハンナと合流し、その後に四人で小物店に立ち寄った。
 小物店は大聖堂に近いため、大聖女アンナに関する品を多く取り扱っていた。
 マリーは一冊の本に目を留める。
 マリーは聖女の時に大聖女アンナ関係の本を全て読破していたが、見た事がない本だった。
 その本は宗教研究家が書いた”大聖女アンナの真実”という論文だった。
 マリーはその論文が気になり、他の物と一緒に購入した。

 夕刻になり、王都観光を終えると、マリーは笑顔で姉妹と別れてフィデリックと共に馬車に乗って王城へ帰った。
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