聖女の力を搾取されて使い捨てられた元聖女は、辺境地へ国外追放されて冷酷聖騎士に溺愛されながら運命愛に導かれました
 「館長! 広場で争いが……!」
 「争いとは何だ?」
 館長が問うと、慌てて走ってきた学芸員は息を整えながらやっと答える。
 「魔王が……、広場で魔王が隣国の聖騎士団長様をーー」
 「魔王だと!?」
 ウィラルドは学芸員に声を荒げてマリーを一瞥する。
 マリーの前世である大聖女アンナは魔王に命を狙われていた。
 「魔王……」
 フィデリックは不安な表情でウィラルドの命令を待つ。
 ウィラルドは魔王を倒すために広場へ行くつもりでいるが、危険な場所に命を狙われているかもしれないマリーも一緒に連れていっていいか迷っている。
 ウィラルドはマリーの安全のために「城にいろ」と言いかけたが、意志の強いマリーの声が耳に届く。
 「ウィラルド様、わたしも一緒に行くわ。わたしはウィラルド様のパートナーの聖女よ。どんな時もウィラルド様のそばを離れないわ。ウィラルド様はわたしをパートナーの聖女と言ってくれたでしょ?」
 ウィラルドはマリーへそう言ったのをハッキリと覚えている。
 ウィラルドは未知の魔王への恐怖でマリーを守れるのかという不安から、当たり前の決断をできなかった事を恥じる。
 ウィラルドはマリーの言葉を受け入れ、マリーを守り抜く覚悟を決める。
 「わかった。マリーは必ず俺が守る。そばにいてくれ」
 「ウィラルド様、ありがとう」
 マリーはウィラルドが自分の意志を聞き入れてくれた事を嬉しく思い、礼を言って表情を緩める。
 「英雄聖騎士様の聖剣が……!」
 フィデリックが二人の話しを見守っていると、展示されている英雄聖騎士の聖剣が光り出した事に驚く。
 「光っている……」
 ウィラルドは呟き、ショーケースに手をかざすとガラスにヒビが入り、静かに割れる。
 「ガラスが、割れた……」
 学芸員が無意識に呟き、館長は声を出さずに驚愕している。
 ガラスの破片は聖剣を避けるように周りに散らばっている。
 ウィラルドが聖剣を手に取ると、より一層白く光り輝く。
 それを目にしたフィデリック、館長、学芸員が言葉を失う。
 大聖女アンナ伝説に登場する英雄聖騎士、エドワルドの聖剣は本人が手にすると白く光ったと記されている。
 自ら白く光り輝くエドワルドの聖剣を手にするウィラルドは英雄聖騎士そのものに見える。
 「聖騎士王太子殿下、あなたはーー」
 フィデリックが言葉を続けられずにいると、ウィラルドがフィデリックへ叫ぶ。
 「俺はこの聖剣を持って先に広場へ行く。お前は後から来い! マリー、行くぞ」
 「はい!」
 ウィラルドはエドワルドの聖剣を鞘に収め、それを背負ってマリーへ手を差し出す。
 マリーはウィラルドの手を取ると二人は走り出した。

 呆然としていたフィデリックは衝動的にウィラルドの後を追いかけて博物館の外へ出る。
 フィデリックが博物館の外へ出るとウィラルドとマリーはペガサスに乗って広場へ飛んでいった。
 「ペガサスが飛んでいるーー。聖騎士王太子殿下、あなたは本当に英雄聖騎士、エドワルド様なのですか?」
 フィデリックは白馬がペガサスだと知り、ペガサスが視界から消えるまで見ていた。
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