十秒怪談
顔ぶれ
Uという男性から聞いた話だ。
彼は、あるコンビニエンスストアで店長を務めている。三十五歳で脱サラし、大手チェーンのフランチャイズオーナーとなったのだ。
店舗運営は苦労が絶えないという。利益は薄く、年中無休。理不尽な理由で客に頭を下げる回数は、会社員時代よりもはるかに増えた。
だが、同業者が等しく抱える悩みのうち、ひとつだけ彼には無縁のものがあった。
従業員の離職問題である。
二十四時間の運営をアルバイトやパートに頼る業種だ。せっかく仕事を覚えてもすぐに辞めてしまい、人材確保に苦心する。
同業種の店長たちのそうした嘆きを聞くたび、Uは曖昧な愛想笑いを返すしかないのだという。
彼の店では、人が辞めないからだ。
特別に待遇が良いわけでも、時給が高いわけでもない。彼やともに店に立つ妻に、ことさら人を惹きつけるようなカリスマ性があるわけでもない。立地柄、客足が途絶えることもなく、仕事は決して楽ではない。
それでも、誰も辞めない。
店を立ち上げた当時に採用した十二名のうち、欠けたのは病気で通えなくなった一名のみ。
従業員たちにその理由を尋ねても、「他にやりたいこともない」「居心地がいい」などと、皆が一様に薄く笑みを湛え、当たり障りのない答えを返すだけだった。
オープニングスタッフとして採用した当時、高校生だったアルバイトの男の子は、今年で三十八歳になった。すでにUが店を始めた年齢を超えている。
Uは彼らスタッフへの感謝を口にしつつも、どこか、ひどく怯えている様子だった。
彼の店は現在も、二十年前とまったく同じ顔ぶれで営業を続けている。
彼は、あるコンビニエンスストアで店長を務めている。三十五歳で脱サラし、大手チェーンのフランチャイズオーナーとなったのだ。
店舗運営は苦労が絶えないという。利益は薄く、年中無休。理不尽な理由で客に頭を下げる回数は、会社員時代よりもはるかに増えた。
だが、同業者が等しく抱える悩みのうち、ひとつだけ彼には無縁のものがあった。
従業員の離職問題である。
二十四時間の運営をアルバイトやパートに頼る業種だ。せっかく仕事を覚えてもすぐに辞めてしまい、人材確保に苦心する。
同業種の店長たちのそうした嘆きを聞くたび、Uは曖昧な愛想笑いを返すしかないのだという。
彼の店では、人が辞めないからだ。
特別に待遇が良いわけでも、時給が高いわけでもない。彼やともに店に立つ妻に、ことさら人を惹きつけるようなカリスマ性があるわけでもない。立地柄、客足が途絶えることもなく、仕事は決して楽ではない。
それでも、誰も辞めない。
店を立ち上げた当時に採用した十二名のうち、欠けたのは病気で通えなくなった一名のみ。
従業員たちにその理由を尋ねても、「他にやりたいこともない」「居心地がいい」などと、皆が一様に薄く笑みを湛え、当たり障りのない答えを返すだけだった。
オープニングスタッフとして採用した当時、高校生だったアルバイトの男の子は、今年で三十八歳になった。すでにUが店を始めた年齢を超えている。
Uは彼らスタッフへの感謝を口にしつつも、どこか、ひどく怯えている様子だった。
彼の店は現在も、二十年前とまったく同じ顔ぶれで営業を続けている。

