く ち な し―身代わりの恋
大橋の言葉で、そうだった、と事の発端を思い出す。

夫の浮気や事故の事を誰にも話さないで貰う代わりに、″擬似恋愛 ″をする条件だった。

けれど。

「今は、もうそんなの関係ない」

それくらい私は大橋の事を必要としていた。

「ずっと恋愛していたい。その為なら……」

貴方が、私が既婚者である方がいいと言うなら、その間、板垣の妻でいる。

私の決意に大橋は首を横に振った。

「梓の人生を左右する価値なんてないよ、俺には」

大橋は私から離れると、浴室に行き湯加減を確かめて貯め始めた。

「旦那を許せないなら離婚すればいい、俺はどうしてやる事もできない」

やっぱり。
この人は、私が離婚したらもう会わないんだ。

まだお湯も貯まってないのに、服を脱ぎ始めた大橋が私の方を見た。

「時間ないし、脱げば?」

面倒な事になりそうな私と、さっさとヤってサヨナラする気だ。
躊躇いがちにシャツのボタンを外していると、大橋が少し濡れた手でそれに加勢した。


「ちゃんと避妊はするから」
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