く ち な し―身代わりの恋
《姉さんが最近、全然顔を見せないから、母さんも心配してたよ 》

弟の声を聞いて、ほっとする。
無条件に気にかけてくれる存在は貴重だ。

「理に、お願いがあるの」

《え、何? 雑用?》

私は、理に知られたくないという大橋の気持ちを尊重して、詳しくは話さなかった。

「私の車を大橋モータースに届けて欲しいの」

《大橋モータース? そこ、同級生の店だよ》

「そうなの? 前、修理に出したんだけど、ちゃんと直ってなくて……」

《姉さん、行けないの?》

「事務処理が忙しくて出られないから」

《そんなに?……んー、分かったよ》

理は不可解そうな声を出しながらも承諾してくれた。



理はその日の午後にやって来た。

「山脇さん、何で家の前にいるの?」

「この辺、変な輩がうろついてるって噂だから警護」

「へぇ、業務外だろうに、秘書も大変」

「車検証はダッシュボードね」

秘書の見張りを不審に思いながらも、理は私の車を大橋の元へ持って行ってくれたが、山脇さんは何も言わなかった。

無事に届きます様に。


――車内のダッシュボードに大橋宛の手紙を入れて置いたのだ。
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