く ち な し―身代わりの恋
そして。夫が東京へ行く日。
私は落ち着きなく家事をしていた。
理が言うように、私は嘘をつくのが下手くそだ。
洗濯物を干しながら、 時計とリビングでくつろぐ祐介の姿をつい、交互に見ていると、
「早く行けって顔してるな?」
祐介は、読んでいた新聞を叩きつける様にテーブルに置いた。
「……別に」
私は、夫から目をそらしてリビングから出て行こうとした。
「そうやって俺の目を見ないのが証拠だよ。残念ながら今日の東京行きはなくなった」
「……え……」
大橋の元へ車を取りに行き、九州から出るという、思い描いていた逃亡計画が崩れていく。
「サミットには議長が行く事になったからな、今日は休日だ」
落胆の色を隠せない私を、夫が楽しそうに見る。
「どーせ、あの男に会うつもりだったんだろ?」
″ そうはさせない ″と、私の腕を引っ張った。
「お前は、最低あと2年、家から出られない。周りに心の病だと話してる」
「……2年?」
次の選挙が終わるまで?
「それまで、どうしても男が欲しくなったら大人の玩具で我慢してろ」
何処から持ってきたのか、新品らしきビニールに入った卑猥な道具を鞄から取り出す。
「本物より反応いいかもしれないな?」
声を立てて笑う夫を、殺したいほど憎たらしく思った。