く ち な し―身代わりの恋
「山脇……!」

度重なる暴言から秘書の恨みを買い、とうとう裏切られたようだ。

祐介は、私の軟禁など忘れたかの様に、慌てふためいて家を出ていった。
きっと、後援会や事務所等を走り回るんだろう。
元々、自分以外はどうでも良かった人――

呆気に取られていると、秘書の山脇さんが家を訪れた。


「奥様、先生を窮地に追い込んで申し訳ありませんでした」

頭を下げつつも、何か吹っ切れたかのように山脇さんは夫への不満をぶちまけ始めた。

「自分は、もう何年も暴言だけでなく暴力も受けておりました。その際の痣も医師の証明を得ています」

そして。
祐介には、あの棗以外にも遊ぶ女が多くいる事、 その度に公費を不正に流用してる事を明かした。

「……知らなかった」

経理は私がやっていたのに。

「このままでは奥様にまで飛び火してしまいます。早めに離別された方が宜しいかと……」

役所から取ってきたという離婚届まで置いて出ていった。

「ただ、あの大橋という男との再婚は難しいかと思います」

――私への苦言も残して。

……分かってる。


それでも――

私の足は自然と、大橋モータースに向かっていた。
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