く ち な し―身代わりの恋
車屋なの? この人。

何故か悪い男だとは思えなくて、私は男の運転する車に付いていった。
数分走って止まった場所は、山林側の車の廃棄場だった。

「奥さんの車も結構、やっちゃったね」

大橋という男が傘を差して車の傷を眺めている。
私も降りて車体の前方部を見てみた。

「修理ってどのくらいかかりますか?」

「お金? それは板金屋に見てもらわないと分からないな」

「あ、いえ。時間の事です」

私がすかさず言うと、「さすが金持ち」と大橋は軽く鼻で笑って、

「それは、貴女次第かな」

傘を下ろし歩み寄ってきた。
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