く ち な し―身代わりの恋
「……でも、不倫の証拠なんてないから」

目撃しただけなら信憑性もない。

「平常心なら起こり得ない事故、それが何よりの証拠だよ。それに、車、ドラレコ付けてるよね?」

「!」

勝ち誇ったような男の顔を見て、今更ながら、夫の後を付いていった事を後悔した。

パートナーの秘密を知ったって、良い事なんて一つもないのに。
浮気した夫の為に、私が犠牲になる必要もない。
そう思うのに、なぜか、

「……貴方の要望って?」

黙秘して貰う為の交換条件を、私は、受け入れようとしていた。

「簡単な事だよ」
< 18 / 64 >

この作品をシェア

pagetop