く ち な し―身代わりの恋
議員の妻になってから、姉さんは何処に行くにもキッチリした装いをしていたのに。

「……え? あ、うん。そう女子の集まり」

今日はデニムのサブリナパンツに、Aラインの飾り気のないカットソーを合わせてるだけだった。
髪も巻かずに少女のように無造作。

「同級生は気を遣わなくていいから」

しかも。
この俺に嘘をついている。
姉は、嘘をついたら視線を合わせないから直ぐに分かる。

「で、わざわざその前に寄って、俺に何か相談でもあるの?」

俺達はずっと仲がいい。
俺が中学生になった頃から、姉は些細な悩みも俺に話してきた。

「……うん。あのね、」

大体、内容は、好きな先輩の話や、うまくいかない友人関係の話だった。

「……何?」

「……」

″あのね″ の先が出てこない。
俺は、カクッと少し古くさいリアクションをして、それでも姉の言葉を待った。

「やっぱり、いい」

姉は、小さい溜息をついて時計を見た。
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