く ち な し―身代わりの恋
しっかりと大橋の両腕に包まれている為、強引に侵入してくる舌からも逃げられない。
押し潰されそうなほど密着した胸が痛くて体をずらそうとしたら、今度は肩をしっかりと抱き締められた。

「俺は、梓が旦那しか見てなくてもいいんだ」

「……え」

″身代わりの恋でも構わないんだよ″

そう耳元で囁いて、大橋の唇が首から下へと移っていく。

″身体が目的じゃない″

そう言っていたのにー―
このままだと先まで進んでいきそうで怖いと思う反面…、大橋の身体に全てを委ねたくもなり、キスが胸に移動しても、大きく抵抗する事は無かった。

服部が出ていった窓から、暗闇の庭の中で夜風に音を立てるクチナシの木が見えた。
微かにジャスミンのような香りが漂い、白い花びらが揺れている。

あの花が実をつけるのは秋ー―

その頃、私と大橋。

そして、夫とはどうなっているだろう?
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