く ち な し―身代わりの恋
* * * ✢ 

『お戻しした原稿、修正と加筆したものを一週間以内に送ってください』

担当の編集者が電話でそう言ってからおよそ5日。
俺は完全にスランプに陥っていた。

友達をモデルにした恋愛小説。

そのプロットを担当者に見せて直ぐに、

『ストーリーが地味なので官能で進める、という事で上と決めました』

大幅な見直しを言い渡された。
何を書いたってエロに進めるつもりだったんだろう、編集さんは。

気分転換にでも、と俺は籠っていた部屋から出て居間のTVをつけた。

「また不倫かよ」

今度は元女優の国会議員が不倫して、相手の地方議員の男がスピード離婚した、という報道。

「″桜井議員は一線を越えてない、と釈明しており…――″」

それを見ながら何をしたら不倫なのかと考えた。
そーいや、

『朝田さん (俺のペンネーム)の義理のお兄さん、議員ですよね? そういう近い所を舞台にした不倫小説は面白いと思いますが』

担当者がそんな事言ってたっけ。
今度、義兄さんに裏話、聞いてみるか。
もしかして、本人が不倫してたりしてね。
最近、姉の梓がめっきり実家に寄らなくなったのも気になっていた。
この前、様子がおかしかったし。

何かあったか?
< 68 / 99 >

この作品をシェア

pagetop