く ち な し―身代わりの恋
* * * ✢

大橋のキスの往復で、頭の中も吸われる身体もおかしくなりそうだった。

「……っ」

漏れてくる自身の声を押し殺す。

開いた窓から誰か見ていたらどうするの?
そんな危機感も飛んでしまいそうな熱心な愛撫の中、私は、大橋が庭のクチナシの木を見て、″珍しい ″ と言った事を意味もなく思い出した。

ー―そうだ。
あの時、この人を、どこか懐かしいと感じたんだ。

「クチナシ……」

「え」

私が花の名前を言うと、大橋が気の抜けた顔つきになって、ようやく行為が止まった。

「思い出したの、貴方の事やっぱりどこかで見たって」

「そうか」と、答えた大橋は、スッと私から離れると、開けっ放しだった窓を閉めに立った。

私に背を向けたまま、外を眺めて聞いてきた。

「クチナシの花言葉、知ってる?」
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