過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜



 結局、マンションに帰ったあとも、ずっと樹生は何か考え込んでいて、大した会話もせずに自室に引っ込んでしまった。

 夜ごはんはいらないと言われたけど、インスタントのパスタソースをかけたボロネーゼを置いておくと声をかけたら、ちゃんと食べてあって、ご丁寧に食器も片付けられていた。

 朝になったら、いつものように彼がトーストを焼いてくれて、幾分悩みが解決したような表情を見せていた。

 涼太は疑わなくていいと言ったことが、よっぽど気にさわったのだろう。彼にとっては重要なことなのに、軽く考えてると思われたかもしれない。

「樹生さん、あの……昨日は変なこと言っちゃったね」
「具体的に話してくれ」

 ブラックコーヒーを飲みながら、樹生は目を細めた。この顔は、からかおうとするときによく見せる。どうも少しは彼の気持ちがわかるようになってきたかもしれない。

「島岡くんはいろんな部署の人と仲がいいから、これからも何かと情報をくれるかもしれないけど、私から彼に何か話すことはないから」
「探られても安心しろって言ってるのか?」
「簡単に言うと」
「もっとわかりやすく話してほしい」
「だからその……私は何があっても樹生さんの味方だからね」

 大した力にはなれないけれど、一緒にいることで彼が安心できるなら、少しは役に立てるかもしれない。

 上目遣いでちらりと見たら、彼は口元にうっすら笑みを浮かべている。

 何やら楽しんでいるように見えるのに、その形すら整っていて憎らしいぐらいだ。でもいつか、その唇に触れられたら……なんて考えたりして、朝からどうかしている。
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