過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜
 そうは言っても、樹生は車通勤だ。このまま一緒にマンションに帰るのだろうか。あまりにも大胆な行動に驚いたが、七海は黙ってあとについていく。

「彼とはいつもああして楽しそうに話してるのか?」

 車に乗り込むと、樹生が尋ねてきた。

「会えば話す程度ですけど。今日は、私の結婚がうわさになってるって、わざわざ教えにきてくれたみたいです」
「……そうか。それは山村しか知らないはずだけどね。島岡と言ったか、マネジメントと何か通じてる可能性は?」

 あまりにも真剣に言うから、七海はちょっと笑ってしまった。

「島岡くんは大丈夫ですよ。全然腹黒くないお人好しですから」
「やけに、彼をわかったようなこと言うじゃないか」

 杞憂だったか、と笑ってくれるのを期待していたが、ますます彼は不機嫌そうにハンドルをつかむ手に力を込めた。

「あ……、確かに、特別仲がいいわけじゃないので。でも、総務の女の子たちがうわさしてたって教えてくれました」
「山村が情報を漏らしたとでも?」
「どうでしょうか。誰と結婚したかまでは知らないみたいでしたよ。女の子たちの嗅覚はあなどれないんです」

 あんまり深刻にならなくてもいいですよ、と伝えるように笑みを浮かべたら、樹生は鼻を歪めて目をそらしてきた。

「まるで俺の嗅覚が役に立たないとでも言いたげだね」

 皮肉げにそう言ったきり、樹生は黙り込んでしまった。
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