過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜
それを思うと、大学時代、やけに樹生は自分に話しかけてきた。出会ったときからそうだった。あれはなんだったのだろう。やはり、声をかけずにはいられないぐらい、頼りない学生に見えていたのだろうか。
考えごとをしながら歩いていたが、七海はふと、足を止めて振り返った。
(いま、何か視線を感じたような……)
樹生かとも思ったが、いるはずがない。首をかしげて、ふたたび歩き出す。しかし、どうにも見られているような気がする。
もし、つけられているなら、このままマンションまで帰るわけにはいかない。駅を通り過ぎ、前方に現れる歩道橋をのぼった。
(やっぱり……)
同じように誰かが階段をあがってくる。急いで走り出そうとしたときだった。背中に強い衝撃があり、地面に叩きつけられた。投げ出されたバッグから、スマートフォンが飛び出す。
(樹生さんに……連絡しなきゃ)
伸ばした指の先で、黒いヒールがスマートフォンを踏みつけた。ディスプレイに放射状のヒビが入り、ホワイトアウトを起こしてまぶしく光る。
「あの男に連絡しようとしたって無駄よ」
頭上から降ってくる声に驚いて、上を見上げた。
「折田さん……?」
総務の折田梨々子が、冷たいまなざしでこちらを見下ろしている。彼女とは一度会ったきりだったが、挑戦的な目にはまだ、明確な敵意が見えていた。
「どうして……」
宏弥に頼まれ、梨々子は樹生の結婚を問題にする気だったが、山村部長の懐柔に失敗し、それは防げたはずだった。
「どうしてですって? 副社長が来たせいで、何もかもがめちゃくちゃよっ」
考えごとをしながら歩いていたが、七海はふと、足を止めて振り返った。
(いま、何か視線を感じたような……)
樹生かとも思ったが、いるはずがない。首をかしげて、ふたたび歩き出す。しかし、どうにも見られているような気がする。
もし、つけられているなら、このままマンションまで帰るわけにはいかない。駅を通り過ぎ、前方に現れる歩道橋をのぼった。
(やっぱり……)
同じように誰かが階段をあがってくる。急いで走り出そうとしたときだった。背中に強い衝撃があり、地面に叩きつけられた。投げ出されたバッグから、スマートフォンが飛び出す。
(樹生さんに……連絡しなきゃ)
伸ばした指の先で、黒いヒールがスマートフォンを踏みつけた。ディスプレイに放射状のヒビが入り、ホワイトアウトを起こしてまぶしく光る。
「あの男に連絡しようとしたって無駄よ」
頭上から降ってくる声に驚いて、上を見上げた。
「折田さん……?」
総務の折田梨々子が、冷たいまなざしでこちらを見下ろしている。彼女とは一度会ったきりだったが、挑戦的な目にはまだ、明確な敵意が見えていた。
「どうして……」
宏弥に頼まれ、梨々子は樹生の結婚を問題にする気だったが、山村部長の懐柔に失敗し、それは防げたはずだった。
「どうしてですって? 副社長が来たせいで、何もかもがめちゃくちゃよっ」