代理意趣返し。
 縋るように絡められる白い指先も、口づけをねだって首を引き寄せたがる両腕も、赤く火照った頬も、甘く掠れた声も、君のなにもかもが俺を惑わす。

 これではまるで、君が、俺を愛しているみたいだ。

 それ以上喋らないでほしい。
 なにも言うな。俺を呼ぶな。そんな目で俺を見ないでくれ。

 新しい涙を次々と溢れさせて甘い声をあげる君は、俺が知る他の誰よりも美しい。
 あっけなく絡め取られてしまったのは、君ではなく俺だ。長く抱えていた想いを直接君に告げるつもりなんて、本当はこれっぽっちもなかった。あの日なにもかもを狂わされたのは、俺だって同じなんだ。

 だからもう俺を惑わさないでほしい。
 叶う見込みのない期待を、これ以上俺に抱かせないでほしい。

 力が抜けた身体を、壊れ物に触れるように緩く抱き締める。
 いまさらこんなふうに触れたところで仕方ないと頭では分かっていても、いつだって最後にはこうするしかできない。

「愛してるんだ……」

 掠れきった俺の声に、君からの反応はなかった。
 当然だ。俺が君にこの言葉をかけるのは、君が眠っていたり気を失っていたりするときだけ。いつだって、君が聞いていないときだけだ。
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