代理意趣返し。
 だってそれを聞いたら、君は簡単に返してしまうでしょう?
 私も、と口にしてしまうでしょう?

 駄目だよ。だってそれは勘違いだ。
 俺に救われたみたいな気になってしまっている、それ自体が錯覚なんだ。

 君は絶対に、安易に俺に心を開いたりしてはいけない。

 君には心底同情する。
 恋人に何度も浮気を繰り返されて、それを実際に目の当たりにして傷ついて、挙句こんな男に捕まって……君は一体、どこまで運が悪いんだろう。

 愛する人に愛してもらえないこと。
 どれだけ愛していようと、それを本人に伝えることすら許されないこと。
 それこそが、俺が犯した罪への罰。

 細い人差し指が、ひくりと小さく動く。
 結局、それには気づかなかったふりを決め込むことにした。



〈了〉
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