代理意趣返し。
「ほら、続きは?」
「な、なに言ってるんですか! そもそも社内でなんてこと……仕事だってまだ途中なんですよっ!?」
「いいよそんなの、わざと安藤さんに振り分けただけだし。今日、君だけが残業になるようにって」

 目の前で微笑む椎名主任は、私の知る彼とは完全に別人だった。
 ここにいるのは、穏やかで部下思いで仕事も優秀で……そういう普段の主任ではない。端正な顔立ちと切れ長な瞳の奥に宿っているのは、普段の彼からは想像も及ばないほどの、嫉妬によく似た激情だけだ。

「そうだ、ひとついいことを教えてあげようか。俺も昨日、あいつらの浮気現場? 見ちゃってたんだよね」
「……え?」
「安藤さん、全然気づいてなかったでしょう? 本当に馬鹿だよね、あいつ。俺にはこんなの、これ以上ないチャンスでしかなかった」

 最後の言葉が耳に届き、今度こそなにも考えられなくなった。

 目を閉じてしまいたかった。
 私はなにも見ていない。主任の本性も激情も、瞳の奥で揺れる狂気も。
 無理にでもそう思い込まなければこれ以上は耐えられない気がして、けれど。
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