君の隣は、呼吸ができる
一時間、満員電車をなんとか耐えて。
今日も無事に、職場の最寄り駅に着いた。
――そう思ったのに。
「あー……結構腫れてるなぁ」
「これで、よし」
「ひゃっ!」
ジェルの冷たい感触がおでこにダイレクトにきて、思わず肩をすくめる。
電車を降りるときに誰かの荷物とぶつかり、私のおでこが赤くなってしまった。
急きょ駅内のドラッグストアで冷却シートを買って、真樹に貼ってもらう。
彼の大きな手が離れると、おでこからひんやりとした感覚が染み渡って、痛みが少しずつ引いていく。
「大丈夫か? 気付かなくてごめん」
「違うよ、私が前を見てなかったのが悪かったの」
ジェルを貼ってもらう間、ずっと顔を上げていたから首の付け根がじんわり重い。
ゆっくり首を回して、こわばりをほぐした。
「……若葉は、色々とその……大変だよな」
心配そうな顔で見下ろされる。
――小さいから。
その言葉を、彼がなんとなく濁したのが伝わった。
私は照れ笑いを向けた。
真樹に気遣われながら、少し後ろを歩く。
駅を出ると、朝日を反射した高いビルと、行き交う車が視界いっぱいに広がっていた。
大きな交差点の信号が、ちょうど青に変わった。
ちらりと腕時計に目をやった真樹。
私は慌ててカバンから包み紙を取り出して、彼に差し出した。
「急がなきゃだよね、今日もありがとう」
「それとこれ、お土産だよ!」
真樹は口元をわずかに緩めると、短く礼を言ってそれを受け取る。
彼はそのまま、軽く手を振って人混みの中へ駆け出していく。
信号が変わるまで、私はその後ろ姿を見送った。
――ふと。
周りの視線を感じて、急におでこが恥ずかしくなってきた。
手で隠しながら、自分の職場へ向かう。
思わぬトラブルで、ろくに説明できずに渡したけれど。
真樹に渡したのは、この前友だちと行ったテーマパーク限定のキーホルダー。
葉っぱを抱えたハムスターが可愛くて、つい手が伸びてしまったのだ。
どこかへ遊びに行くたびに、こうして真樹の分までお土産を選ぶ。
それがずっと前からの習慣になっている。
今回のお土産、真樹は恥ずかしがるかもしれない。
「ふふ」
包みを開けたときに、「どこに付けるんだよ」って笑いそうで。
想像して、軽く吹き出した。
今日も無事に、職場の最寄り駅に着いた。
――そう思ったのに。
「あー……結構腫れてるなぁ」
「これで、よし」
「ひゃっ!」
ジェルの冷たい感触がおでこにダイレクトにきて、思わず肩をすくめる。
電車を降りるときに誰かの荷物とぶつかり、私のおでこが赤くなってしまった。
急きょ駅内のドラッグストアで冷却シートを買って、真樹に貼ってもらう。
彼の大きな手が離れると、おでこからひんやりとした感覚が染み渡って、痛みが少しずつ引いていく。
「大丈夫か? 気付かなくてごめん」
「違うよ、私が前を見てなかったのが悪かったの」
ジェルを貼ってもらう間、ずっと顔を上げていたから首の付け根がじんわり重い。
ゆっくり首を回して、こわばりをほぐした。
「……若葉は、色々とその……大変だよな」
心配そうな顔で見下ろされる。
――小さいから。
その言葉を、彼がなんとなく濁したのが伝わった。
私は照れ笑いを向けた。
真樹に気遣われながら、少し後ろを歩く。
駅を出ると、朝日を反射した高いビルと、行き交う車が視界いっぱいに広がっていた。
大きな交差点の信号が、ちょうど青に変わった。
ちらりと腕時計に目をやった真樹。
私は慌ててカバンから包み紙を取り出して、彼に差し出した。
「急がなきゃだよね、今日もありがとう」
「それとこれ、お土産だよ!」
真樹は口元をわずかに緩めると、短く礼を言ってそれを受け取る。
彼はそのまま、軽く手を振って人混みの中へ駆け出していく。
信号が変わるまで、私はその後ろ姿を見送った。
――ふと。
周りの視線を感じて、急におでこが恥ずかしくなってきた。
手で隠しながら、自分の職場へ向かう。
思わぬトラブルで、ろくに説明できずに渡したけれど。
真樹に渡したのは、この前友だちと行ったテーマパーク限定のキーホルダー。
葉っぱを抱えたハムスターが可愛くて、つい手が伸びてしまったのだ。
どこかへ遊びに行くたびに、こうして真樹の分までお土産を選ぶ。
それがずっと前からの習慣になっている。
今回のお土産、真樹は恥ずかしがるかもしれない。
「ふふ」
包みを開けたときに、「どこに付けるんだよ」って笑いそうで。
想像して、軽く吹き出した。