君の隣は、呼吸ができる



なんとか会社のビルに着くと、清掃員さんが目を丸くした。

「あら、若葉ちゃん。おめかしして可愛いー」

やっぱり子ども扱いされてる気もするけれど。
やっと、誰かに気付いてもらえて嬉しくなった。


――でも。


「こんなに可愛い妹が一緒にいたら、お兄ちゃん、いつまでも彼女ができないわね」


そう笑顔で言うと、掃除機をかけ始めた。

(!!!!!)


今朝、鏡の前で何度も笑顔を向けた自分を思い出して、ひどく恥ずかしくなってきた。
今度は掃除機の音が、私を笑っているみたいに聞こえてくる。


「あは、あはは……」

引きつった声を出した後、うなだれて事務所に入っていった。
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