君の隣は、呼吸ができる
「え、大丈夫?」

澄んだ高い声が頭に落ちる。

「ご、ごめんなさい……!」

鼻を押さえながら顔を上げて、ドキッとした。

ゆるくウェーブした、ツヤツヤの長い黒髪。
背が高くて、スタイルの良い、綺麗な女の人。

アイスコーヒーを片手に立っている姿が様になる。

(あ……)

見覚えがある。

前に、先輩と買い出しに行ったときに見かけた人だ。
真樹と並んで、楽しそうに笑い合っていた……。


その時――

「先輩、お待たせしました」

女の人の後ろから聞き慣れた低い声がして、心臓がどくんと跳ねた。
 
(真樹……!)

女の人が振り返ると、ふわりと甘い香りがした。

その肩越しに、真樹の姿が見える。
朝と変わらない、きっちりスーツを着こなした彼だ。

「――え、若葉?」

驚いた顔をしている真樹と視線がぶつかった。
その瞬間、どっ、どっ、どっと心臓が暴れ出す。

(……どうしよう……)

今、こんな私を見られるのが嫌だった。


「へー、知り合いなの?」

涼やかな声が真樹に問いかける。

「可愛い子だね」

私を見てふんわり微笑んだ。
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