君の隣は、呼吸ができる
信号待ちで立ち止まると、先輩が私の方に体を向ける。
口元に手を当てて、じっと私を見つめた。
「え、何ですか?」
「それくらい女っぽくなると、悪くはないよなー」
そして、私の反応を探るようにニヤリとした。
「若葉ちゃん、俺と付き合ってみる?」
「げえっ」
思い切りしかめっ面をしてみた。
「何だよー、珍獣を見るような顔して」
「……すみません」
先輩は、お腹を抱えてケラケラと笑い出した。
(やっぱり冗談だったか)
「何があったか知らないけど、元気出せよー」
そう言って先輩は口元を緩めたまま、正面の信号に向き直った。
「……はい、ありがとうございます……」
街の明かりに照らされて、先輩と並ぶ影がうすく地面に伸びていく。
その影のバランスは自然で、ちょうどいいなと思った。
(私、ずっと身長のことばかり考えてる)
本当に引っかかっているのは、そういうことなのか。
それに。
私の子どもっぽさが無くなれば、真樹と違和感なく並べると思っていた。
でも――
ヒールの靴を履いて、服も髪型も変えてみたのに。
(前より気持ちがスッキリしない……)
(……何でだろ……)
私が変わったら、今までのようにいられなくなる気もした。
むしろ、少しずつ遠くなっていく気がする。
まるで、真樹が隣にいる理由がなくなるような……。
そんな得体の知れない不安で、胸が苦しくなる。
ふと、カバンが小刻みに震えていることに気付く。
「……!」
スマホを取り出すと、着信画面には真樹の名前が表示されていた。
(……今は、話せないよ……)
通話ボタンを押せないまま、スマホの震えが止まった。
静かになった画面から、しばらく目を離せなかった。
口元に手を当てて、じっと私を見つめた。
「え、何ですか?」
「それくらい女っぽくなると、悪くはないよなー」
そして、私の反応を探るようにニヤリとした。
「若葉ちゃん、俺と付き合ってみる?」
「げえっ」
思い切りしかめっ面をしてみた。
「何だよー、珍獣を見るような顔して」
「……すみません」
先輩は、お腹を抱えてケラケラと笑い出した。
(やっぱり冗談だったか)
「何があったか知らないけど、元気出せよー」
そう言って先輩は口元を緩めたまま、正面の信号に向き直った。
「……はい、ありがとうございます……」
街の明かりに照らされて、先輩と並ぶ影がうすく地面に伸びていく。
その影のバランスは自然で、ちょうどいいなと思った。
(私、ずっと身長のことばかり考えてる)
本当に引っかかっているのは、そういうことなのか。
それに。
私の子どもっぽさが無くなれば、真樹と違和感なく並べると思っていた。
でも――
ヒールの靴を履いて、服も髪型も変えてみたのに。
(前より気持ちがスッキリしない……)
(……何でだろ……)
私が変わったら、今までのようにいられなくなる気もした。
むしろ、少しずつ遠くなっていく気がする。
まるで、真樹が隣にいる理由がなくなるような……。
そんな得体の知れない不安で、胸が苦しくなる。
ふと、カバンが小刻みに震えていることに気付く。
「……!」
スマホを取り出すと、着信画面には真樹の名前が表示されていた。
(……今は、話せないよ……)
通話ボタンを押せないまま、スマホの震えが止まった。
静かになった画面から、しばらく目を離せなかった。