君の隣は、呼吸ができる
✴✴✴

――あの日から、もうすぐ一週間。

いつもの朝。だけど、少し違う。
今日は、お互いの家から通勤する最後の日。

履きなれたフラットシューズに足を通して、玄関の鏡の前で拳を握った。

「まずは無駄遣いをやめる!」

私もちゃんと、自立していこうと思った。

いきなり周りのみんなと同じようにはなれない。
だから、自分らしく変わっていきたい。

「買う前に、まずは考える。……よしっ」

気合を入れてから家を出ると、隣から同じタイミングで門を開く音がした。

「あっ」

朝日に照らされた真樹の姿を見つけただけで、胸がふわっと弾む。

「真樹、おはよー!」

すぐに私に気付いた彼は、いつものように笑顔で手を上げた。


真樹は、明日から新しい生活を始める。

隣の家にいなくなるのは、やっぱり寂しい。

でも。
駆け寄って彼を見上げると、穏やかに微笑んでくれる。

それだけで、胸の奥がじんわり満たされた。

歩き出すと、真樹が私の歩調に合わせてくれる。
彼の変わらないやさしさが愛おしくて、離れても大丈夫だと思えた。

(隣の家じゃなくなるだけ――だもんね!)

私の心の声が聞こえたかのように、真樹が私を見つめて頷いた。
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