君の隣は、呼吸ができる
地元の駅が見えてくると、真樹の歩調がさらにゆっくりになった。

「……あのさ」

真樹がぽつりと口を開く。
同時に足を止めて、私は隣の彼を見上げる。

「あのキーホルダー、あるだろ」
「若葉も持ってるの?」

葉っぱを抱えたハムスターのキーホルダーが浮かぶ。

「うん、同じのあるよ。まだ使ってないけど」

すると真樹が、ほっとしたような顔をしてから口元を緩めた。

「……じゃあ今度、新しい鍵渡すから」

「!」

(真樹の家の……鍵!?)
(これって、もっと恋人っぽくない!?)

今度は私の頬が一気に熱くなった。

そんな私を見て満足そうに目を細め、真樹は楽しそうに笑った。


小さい頃から、何度も一緒に眺めてきた街並み。
新しい家が建ち、お店が増えて、景色は少しずつ形を変えていく。

お互いに、当たり前のように手を伸ばして指を絡める。

私たちの身長差もだいぶ変わった。幼馴染から、恋人になった。
けれど、隣で一緒に歩んでいくことは変わらない。


いつの間にか、周りにどう見えても構わないと思えていた。

あんなに悩んだのに。
今は、驚くほど心が穏やかだった。


(――ずっと、真樹の隣にいたい)

見上げれば、雲ひとつない青空が広がっている。
夏の朝の澄んだ空気が、とてもおいしかった。
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