君の隣は、呼吸ができる
街灯に照らされる私たち。
見つめ合ったまま、どちらも動かない。
湿り気を帯びた夜風と、初夏を知らせる虫の声だけが、私たちの間を通り抜けていった。
――やっと。
真樹の唇がゆっくり開く。
「俺が知らないところに行くな」
一瞬、周りの音が消えた。
「……へ?」
言われた意味が全然分からなかった。
目の前にいるのに。視線が合うのに。
何か、変だった。
「どういうこと……?」
意味を教えてほしくて首を傾げる。
すると、真樹が一瞬だけ目を見開いて、それから困った顔をした。
掴まれていた手首から、ふっと力が抜ける。
真樹はそのままスッと立ち上がった。
風に揺れる木の葉の音が戻ってきた。
やっと解放された手首の熱を、ぬるい風が冷ましてくれる。
真樹を見上げる。
彼は、私を見下ろしている。
――元の、私たちになった。
真樹は髪を整えながら、急におかしそうに笑い出す。
「……そもそも、結婚なんて」
「男と付き合ったこともないだろ」
呆れるように言われて、大げさにため息をつかれる。
「!?」
一気に現実に引き戻されて、私はムッとした。
「急に、何の話?」
「それに、な、なんで真樹がそんなこと知ってるの?」
拳を握って真樹を睨むように見上げる。
「知ってるから」
「ええっ!?」
彼はいつものように笑いながら歩き出した。
納得いかない答えに口をパクパクしていると、真樹が背中を向けたまま「ほら、早く帰るぞ」と言う。
「ちょっと待ってよー!」
ベンチに置いていたカバンを掴んで、慌てて後を追いかけた。
見つめ合ったまま、どちらも動かない。
湿り気を帯びた夜風と、初夏を知らせる虫の声だけが、私たちの間を通り抜けていった。
――やっと。
真樹の唇がゆっくり開く。
「俺が知らないところに行くな」
一瞬、周りの音が消えた。
「……へ?」
言われた意味が全然分からなかった。
目の前にいるのに。視線が合うのに。
何か、変だった。
「どういうこと……?」
意味を教えてほしくて首を傾げる。
すると、真樹が一瞬だけ目を見開いて、それから困った顔をした。
掴まれていた手首から、ふっと力が抜ける。
真樹はそのままスッと立ち上がった。
風に揺れる木の葉の音が戻ってきた。
やっと解放された手首の熱を、ぬるい風が冷ましてくれる。
真樹を見上げる。
彼は、私を見下ろしている。
――元の、私たちになった。
真樹は髪を整えながら、急におかしそうに笑い出す。
「……そもそも、結婚なんて」
「男と付き合ったこともないだろ」
呆れるように言われて、大げさにため息をつかれる。
「!?」
一気に現実に引き戻されて、私はムッとした。
「急に、何の話?」
「それに、な、なんで真樹がそんなこと知ってるの?」
拳を握って真樹を睨むように見上げる。
「知ってるから」
「ええっ!?」
彼はいつものように笑いながら歩き出した。
納得いかない答えに口をパクパクしていると、真樹が背中を向けたまま「ほら、早く帰るぞ」と言う。
「ちょっと待ってよー!」
ベンチに置いていたカバンを掴んで、慌てて後を追いかけた。