Honey Melty
「咲間さん。今日、ご飯行きません?雰囲気良さげなバー見つけちゃって、これはぜーったいに咲間さんと行きたいなって」
エレベーター付近の廊下。
甘ったるい声で咲間さんを誘う女性社員。胸が強調されたシャツにタイトスカートでお色気ムンムン。しっかりと自分の武器である胸を押しつけている。私には到底真似できない。
ガラスに映った私はパンツに白シャツ、踵が低い黒のパンプス、大しておもしろくも新鮮味もないただのアラサーだ。お色気ムンムンどころか新卒にも見える。顔の疲れが新卒感ないけど。
「へえ、そうなんだ。いいね、行こうよ」
「やった♡じゃあ、終わったら連絡しますね!」
「はーい」
咲間さん、ほんと、ちゃっかりしている。
みんなの咲間さんだから、嫉妬とか醜い感情を持っていたら即死する。強い心を持たないと彼を好きでいることが辛くなるのだ。
「おはよ、真鳥」
エレベーターのドアが開いて一歩進むと、並ぶようにして咲間さんも乗り込んできた。
おはようございます、と返せば、うん、と頷いて5階のボタンを押した。
夜の約束をしている二人の前を通ったわけだけど我ながら鉄の心の持ち主では?日々、鍛えられているだけあるなぁ。関心する。
「なんか、真鳥、体調悪い?」
咲間さんの指が顔の横に垂れている髪に触れた。