Honey Melty
そのまま耳にかけられて「大丈夫か?」と囁くように聞いてきた。
原因は月に2、3回見る母の夢。思い出したくない過去は睡眠を妨害し、心まで殺してくる。夢を見た日は一日中、気持ちが沈む。表に出さないように心がけてはいるんだけど。
「大丈夫ですよ。軽い寝不足です」
あと、咲間さんがかっこよくてクラクラします。
さりげなく髪を耳にかけてくれるの、きゅううってしました。ずるい男です、咲間さんは。
つい数分前に約束していた女性が見たらキレそうだな。幸いエレベーターには私と咲間さんしか乗っていないから、それが救いだ。
「そういえば、豊越から『チェキありがとう』って連絡きてた。やっぱり俺のが一番に目に入ったって。作戦勝ち」
先日、豊越さんが退社された。
泣き顔は見せたくなくて、だから、必死に我慢してたんだけど。
『真鳥ちゃん、私ね、真鳥ちゃんが後輩でほんとによかった。大好きだよ』
豊越さんからかけてもらえた言葉で涙腺爆発してしまった。滝のように涙が溢れて大変だった。ああ、今でも思い出して泣けちゃう。
「だって、ど真ん中に貼ってもらったって言ってたじゃないですか。嫌でも目に入りますよ」
「お?言うねぇ」
顔を覗き込みながら口の端をくいっと上げて笑う咲間さん。そういう色っぽい表情、ずるいんだよなぁ。わかっててやってるのか、無意識なのか。