追放された自称悪役令嬢は落ちぶれた元騎士を拾って辺境に返り咲く
「面白い」

それは賞賛ではない。

警戒でもない。

純粋な“計算対象の変化”に対する興味だった。

「辺境が豊かになるのは構わん」

「ですが宰相、想定外の速度です」

「想定外、か」

グラントは薄く笑う。

「ならば修正すればいい」

部下が顔を上げる。

「……ご指示は」

しばしの沈黙。

そして。

「商人を増やせ」

グラントは淡々と告げた。

「資材の流れ、人の流れ、金の流れを見れば“真実”は見える」

「真実……とは」

「彼女が何をしているのか、だ」

机の上に置かれた羽ペンが、静かに転がる。

グラントはそれを指で止めると、低く続けた。

「優秀な駒は、放置すると盤面を変える」

「ならば」

「再配置だ」

その言葉は静かだった。

だが、王宮の空気は確実に重くなる。

部下は深く頭を下げた。

「承知しました」

扉が閉まる。

宰相は一人残る。

そして小さく呟いた。

「エレノア・アルヴェイン……」

窓の外の空を見上げる。

「次は、どう動く」

その目には、まだ“計画”しか映っていなかった。
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